【思い立った日、本日和。】
#霜降「作家の猫」

霜降

こんにちは。暦生活の下滝です。

肌寒い日も増えて、私たちが外套を身にまとうように、動物たちも冬に備えて温かいふかふかの冬毛に着替えます。冬の寒さの中では犬は外を駆け回り、猫はこたつで丸くなるイメージがありますが、今回は私たちの生活を和ませてくれる、寒がりな可愛い猫の本「作家と猫」(コロナ・ブックス)をご紹介します。

気まぐれ、自由。懐いたり懐かなかったり。人が行くことのできない塀の上を優雅に歩いたりジャンプしたり。柔らかく伸びをして、暖かい場所でのんびりお昼寝する。

慌ただしい生活に身を置く私たちから見ると、羨ましく思えるような生活をしている猫は、文豪や芸術家のよき相棒でした。

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猫と作家の愉快な関係

本書の中のいくつかのエピソードをご紹介していくと、三島由紀夫は「猫狂い」として有名で、外出時に猫の声を聴くと必ず足を止めたとか。
結婚相手が猫を嫌って追い出しても、机に猫のための煮干しをこっそり隠していて、それが見つかって怒られると、今度は自分から実家に暮らす猫に会いに行ったそうです。
人間の狂気や絶望を見事に表現する作家のそんな一面を知ると、なんだか可愛く思えてきませんか?

一方で興味深いのが、「吾輩は猫である」で一躍脚光を浴びた夏目漱石は、じつはたいして猫好きではなく、特に可愛がるといったことはなかったそうです。漱石の家は野良猫を迎え入れたりはしていたものの、当時の人々にとって猫は家畜扱いでした。
そのためか、「名前はまだ無い。」と続く名作の冒頭の通り、家の猫には名前がなかったというエピソードは面白いのですが、猫好きな方には少し寂しいかもしれませんね。とはいえ、猫の目線で世の中を描いたヒット作が生まれたことから、縁起が良いということで夏目家ではその後も多くの猫を飼ったそうです。

猫を愛したり、愛しい人に重ねたり、逆に猫は好きではないけれど、作品の面白さとして性質は利用してみたり。
表現者と猫の関係は、パラパラとページをめくっていくだけでも多様で楽しめます。

著名な人物の意外な顔が垣間見える本書の他にも、同シリーズで犬好きな作家を集めた「作家の犬」という本もありますので、犬がお好きな方はそちらもオススメです。

霜降

 

必見!藤田嗣治の「猫」

京都国立近代美術館で、2018年10月19日から 12月16日まで開催されている没後50年 藤田嗣治展の藤田嗣治も猫好きの一人としてエピソードが掲載されています。

パリ在中に野良猫を可哀想に思って連れて帰り、その後一匹二匹と猫は増えて、女性のモデルがいない時には猫を描くようになったそうです。
おしとやかな反面、荒々しさをもつ猫の気性を興味深く思い、猫を愛するようになったとか。女性も「猫のような…」と例えられることが多いですので、彼にとって女性と猫は同等の魅力を秘めていたのかもしれませんね。

表情をクールに、肢体を柔らかに。自身の好きなものを描いた恋多き画家の描く「猫」は一見の価値ありです。気になった方はぜひ調べてみてください。

美しい姿かたち、生意気で冷たい横顔。芸術家の目で見慣れた生きものを見つめると、今まで思っていたのとは違う動物たちの姿を発見できるかもしれません。
たまには少し視点を変えた読書で、「芸術の秋」も含めて楽しんでみてはいかがでしょうか。

霜降

-今回のここに注目!-
「生きものは人間と違ってウソをいわないからかわいいと思う。」(「熊谷守一画文集 ひとりたのしむ」より)

普通の人が見過ごすような物事、感覚を描く芸術家の世界。そこにおける生きものの役割がわかるような言葉です。私たちの日常に寄り添い、癒やしをくれる意思のある存在に、時には目を向けてみませんか?

 

作家の猫 (コロナ・ブックス)

著者:夏目 房之介, 青木 玉, 常盤 新平 ほか
編者:コロナ・ブックス編集部
出版社:平凡社
定価:本体1600円(税別)
単行本:134ページ
ISBN:9784582634228

没後50年 藤田嗣治展
会期:2018年10月19日(金)~ 12月16日(日)※毎週月曜休館
会場:京都国立近代美術館