涼しいマメ知識 vol.9
「江戸 -団扇と扇子-」

江戸

 

こんにちは。そろそろ朝や夜は涼しくなって、秋の気配がしてきましたね。
1ヶ月連載してきた「涼しいマメ知識」も今回で最終回です。

最終回のテーマは2020年開催予定の東京オリンピックにあやかりまして「江戸」。
江戸時代にはすでに扇子も団扇も存在していましたが、売り方や使われ方が少し異なります。
今回はその一部をご紹介します。

江戸

 

まずは団扇から。江戸時代には、7月から9月頃にかけて背負った竹に団扇をぶらさげたり包んだりして売り歩く行商と、街角で屋台のように置いて売る「団扇売(うちわうり)」という職がありました。

「本渋(ほんしぶ)うちわ、うちわ、更科(さらさ)うちわや反古(ほご)うちわ」などと張り上げる声は夏の風物詩とされていたそうです。

本渋団扇は表面に柿の汁を塗った丈夫で実用的なもの。更紗団扇は人物や花、鳥などを染め出した模様のもの。反古団扇は紙を再利用してつくったもの。

他にも錦絵の団扇や、奈良(なら)団扇という透かし彫りの入ったものもありました。意外にもバリエーションに富んだ団扇が売られていたんですね。
美しい絵団扇は女性の装飾品にもなったそうですが、人気があるのはやはり役者絵のものだったそうです。江戸の人がなんだか身近に思えてきますね。

 

その他に、火事が多かった江戸の消火活動にも団扇が使われています。
当時の消火は水をかけるのではなく、建物を壊す方法をとっていました。「火消(ひけし)」と呼ばれる当時の消防団の道具のひとつが「大団扇(おおうちわ)」です。かつぐほど大きな団扇を、火の粉を振り払うために使ったそうです。今では大きい団扇といえばお祭りで見かけるくらいでしょうか。

江戸

 

続いて扇子ですが、江戸時代にはお正月の年始のあいさつとして桐の箱に入った扇子を贈る習慣がありました。今のお年玉の代わりです。
末広がりで縁起が良いことから行われたそうですが、あいさつの多いことを示すために玄関に扇子の箱を積み上げ、その数で店の信用を見極めるという意味合いもあったとか。

そして年始が終わるとその箱も用済みになりますので、登場するのが「払扇箱買い(はらいおうぎばこかい)」です。配られた扇の箱を買い集めて再利用するのが目的でした。
空き箱を買い取るこの業者から、「献残屋(けんざんや)」というリサイクル業者に引き取られ、箱のない贈答品などを入れて売るのに使われたそうです。面白い一連の流れですが、江戸後期には扇を贈る習慣が減り、引取り業もなくなってしまいました。

 

その他、面白い使われ方としては、江戸時代の「手妻(てずま)」があります。手妻とは、稲妻のごとく手を素早く動かすことからその名がついたそうですが、日本に伝わる現在の手品、奇術のことです。

その中のひとつ「浮かれの蝶」という芸で扇が使われています。これは紙で作った蝶をあおいで、まるで生きているかのように見せる芸でした。

江戸

今も同じ形の団扇や扇子が使われていますが、こうして時代をさかのぼるだけで、単に涼をとるだけではない魅力が感じられます。

皆さんは今年、素敵な団扇や扇子に巡り会えましたか?
心地良い風を送りながら、いろいろな場所や時代に想いを馳せて楽しんでみてはいかがでしょうか。